事業売却&海外移住体験記

私は約3年前に28歳の時に始めた事業を43歳で売却して投資家ビザにてオーストラリアへ移住をしました。
通常はビザ業者が集客のために載せているものであって実体験ではなく、ネット上に情報も少ない実際体験談だと思いますのでその経験をシェアしておきたいと思います。

会社も長くやっていると人の問題や事業の未来、事業継承など色々と問題が出てきます。
自分は45歳までに引退するという目標で事業を行ってきました。

40歳を超えたあたりから「誰かこのビジネスを高く買ってくれる人はいないか」ということを考え始めていました。
ただ、10年近くも会社をやっていると自分の子供のように大切に育ててきた会社でもあり当然愛着も湧くものです。

ただ、最近問題になっている日本の事業継承問題はやはり経営者が若い頃からエントリーは考えていたけれどもイグジットは考えていなかった結果と言わざるを得ないのではないかと思います。そして黒字なのに後継者がいないため閉業という事業売却よりも悲しい結末を迎えることになります。

これについては「いや、事業は社会貢献でもあるし続けてなんぼなんだ。」という意見もお有りかとは思いますが、いざ病気になってしまった。昔は事業が上手く行っていたのに最近は資金繰りに毎日悩んでいる。など私自身はこれらのケースを周りでよく見かけ、自分はせっかく掴んだチャンスをこういう形では終わらせたくない。と常に思っていました。

日本では会社を売るというと「裏切り者。薄情。」などという言葉が連想されますが、ここオーストラリアではビジネスは毎日当然の様に売買されています。
長年オーストラリアに関係したビジネスをしてきていたため、「事業売却」ということに関しては免疫がかなり出来ていたのかもしれません。

ただ、日本ではなかなか周りには理解されないのが現状です。私の場合は会社の従業員に「常に高く売れるなら売るから」と冗談混じりの本気で日頃から伝えていましたので円満事業売却が出来ました。
もし事業売却をお考えの方がいれば何かのタイミングで「もう会社売っちゃおうかなぁ」なんて口にしてみるのもいいかもしれません。
士気も上がるかもしれません。

自分が事業を売却した際は売上、利益とも最高潮の時でした。
ただ、創業から13年が経過していて事業も非常に安定していたので家族もある身で自分が安定志向、安定志向にどんどん向かっていき新たな挑戦や試みの数がどんどん減って行っていました。
そんな時「自分は社長失格だな。」と思いました。
誰かもっと事業を伸ばしたいと思う人に譲らないとこのまま行くと最近問題になっている後継者問題をかかえる経営者と同じになってしまうという危機感が出てきました。
ダメになる前に売却してしまおうと。

そしてネットで事業売却について調べ始めました。
端正込めて育ててきた会社なのに本当にあっさりしたものです。
ここなら大丈夫そうかなという仲介会社にネットから問い合わせをしたところ担当者から連絡があり、お決まりの決算書を5年分欲しいと言われ提出すると面談日を指定されました。

実際会ってみるとM&Aというと一瞬冷たい感じのする世界ですが、非常に親身になって話を聞いてくれました。
一通りヒヤリングがあり、なぜ売りたいのか、いくらくらいでいつくらいまでに売りたいのかという採用面接の時の履歴書の様なものを作成してもらい、「これで一旦マーケットに出してみます。たぶん業績がいいので経験上いいお話は出てくると思います。また、ご連絡いたします。」と非常に丁寧な初回面談は終わりました。
まぁ、無茶言ってくれば売るのを止めればいいだけだからと思いながらいましたが無茶を言われることは一切ありませんでした。

いくつかの相手先を紹介されました。
大手企業も中にはありましたが、概して大手は安い金額を提示してくるので全て蹴りました。

初回面談から2ヶ月くらいでしょうか。
目標の5億円で買いたいという相手が出てきました。
相手方との面談を行い、色々お互いの話をざっくばらんとしたところ化粧品業界は未経験の会社でしたが、本体が製造業の会社だったので、基本は分かっているはずと思い、話をそのまま進めました。

その後、基本合意の契約書が作成され捺印しました。
この時点はあまり実感はありませんでした。
この時点で仲介会社に数百万円ほど支払いました。

その後、売り手が言っていることが本当か、会計的に法律的に本当に会社が大丈夫かを公認会計士が確認するデューデリジェンスが行われます。これは正直資料を大量に準備しないといけないので結構面倒でしたが、目標を達成するにはやるしかないので素直にやりました。このタイミングでビザ申請に必要な会社の資産価値が客観的に分かる資料を公認会計士に無料で「ついでに」作成してもらいました。188を取得する場合で現金や自宅など合計して直近2期で2250000豪ドルない場合はここ重要です。この時点ではまだ会社を売却し現金化していないため企業の資産価値が分からないので公認会計士など有資格者に試算してもわらないといけません。高い仲介手数料を払っているので当然ただでやってくれます。(仲介手数料という形で仲介会社に払って入るので厳密にはタダではないんですが)

もちろんビザに関してある程度下調べはしましたが、このくらいの事業売却がほぼ確実になってきたタイミングからオーストラリアの日本人移民書士に本格的にコンタクトを取り始めてどのビザがベストかを模索、確認という作業をしていきました。

その中で188ビジネスイノベーション&インベストメントビザ(Subclass 188 Business Innovation & Investment Visa)のインベスターストリーム(Investor Stream)が永住権への切り替えが比較的確実であることが分かり、他の記事で書いたポイントテストでも問題がなさそうだったため、目標をここに設定しました。

そうこうしているうちに事業譲渡の最後の契約書が作成され、署名捺印をしました。
そろそろ実感が出てき始めていましたが、事業でもそうですが、口座に入金がされるまで、最後の最後まで分からない。という気持ちでいました。

そして2週間ほど後だったでしょうか。
譲渡先、仲介会社、私の三者で最後の決済引き渡しが行われました。
気分的には不動産の決済引き渡しと同じような感覚でした。
そこには執着のないドライな自分がいました。

自宅から少し時間のかかる場所だっため、前日ビジネスホテルを取って前乗りした部屋で決済当日の朝、自分の個人の口座に5億円が振り込まれていた時はさすがにこれで完了したんだという実感が湧きました。

それから1年間は引き継ぎのために顧問契約を結び、サラリーマンの時の給料を思い起こさせる月額30万円で引き継ぎをしていきました。引き継ぎといってもそんなに大したことはなく、簡単にマニュアルを作って、お金の流れやまとめ漏れている取引先を追加して行く程度で終わりました。
あとはほぼ不労所得みたいな感じであっという間に1年間が過ぎました。
もし私が事業を売却した会社をお知りになられたい場合はご紹介いたします。

これに並行してビザを申請しました。
日本人の移民書士にやってもらっているのでかなりスムーズに行きましたが、準備しなければならない資料は膨大でした。
過去のパスポートやビザ、会社や個人の資産証明として銀行明細、戸籍、事業に実際に関わっていたことを証明する書類など他にもかなりの資料を提出する必要があります。また、警察署に行って無犯罪証明書なども取得する必要があります。

提出は大抵一度では終わりません。
一旦出すと数ヶ月後に、これを出してくださいという形で追加の依頼が移民省から来ます。
自分の場合は3〜4回は来たでしょうか。

これらの移民省との連絡は全て移民書士に来ますので、日本語でどういったものが必要と教えてくれますので安心です。
ビザは一度却下歴があるとまず降りなくなるらしいのでミスが許されません。
決して経費を削る目的で自分でやろうとはしないでください。
素人には目に見えないことやテクニックが多くあると感じました。

最終段階になってくると東京まで指定の病院に健康診断を受けに行かなければいけません。その辺の病院ではダメです。専用の病院があります。1人3万円ほどしたと思います。
ただ、移民書士の方曰く健康診断は他の全ての書類がOKになった時点でないと依頼が来ないものなので今の所は順調という証ですということで安心しました。なんといっても提出をしてからかなり一方的に移民省から連絡が来る感じで、今どうなっているかという問い合わせはタブーということでじっと耐えるしかありません。

これは本当に拷問に近いものがあります。いつおりるかも分からない。本当におりるのかどうかも分からない。おまけに申請に数百万円もかかっている状況で黙ってじっと待つことをしなければいけません。

そして待つこと約2年間。
ようやく移民書士からビザ発給のお知らせというメールが来た時には、もうビザのことなんか忘れかけていました。

しかし、出発日3日前でコロナのために国境閉鎖となり更に半年以上待つことになるとは思いもしませんでした。

でも今思うとそこまでしてまでこのオーストラリアに来たかったんだなとしみじみ思います。
少し長くなってしまいましたので、実際の渡航についてはまた別の記事で書きたいと思います。

最後になりましたが、今回この記事に出て来た事業売却のための会社や移民書士のご紹介をご希望の場合はお気軽にコンタクトフォームからお知らせください。やはりこういったセンシティブな問題は信頼出来る人間に出会わないとなかなかスムーズにはいかないものです。また、事業の借入などは売却の際にあまり関係ないとの話も聞きましたので事業資金の借り入れのある方もどうぞ。

事業売却の仲介会社に直接お問い合わせになられたい場合は「M&Aキャピタルパートナーズ」へお問い合わせください。
私はこの会社で売却しました。やはり売れるかどうか分からない段階で着手金を支払うのは私の中ではあり得ませんでした。

M&Aキャピタルパートナーズ」は基本合意がなされてからでないと報酬が発生しないため、取り敢えず自分の会社がどのくらいで売れるのかということを知っておきたいという方でも気軽に問い合わせできることが特徴です。売る売らないは別として一度問い合わせをしてみる価値はあります。知り合いの社長にも紹介しましたが、紹介した後に、営業の電話が頻繁にかかってきたりしないかと心配していましたが、金額が見合わなかったため結局売らずにキープすることをその社長は決められましたが、不要な営業の電話は皆無とのことでしたので安心しました。

最後に1点注意点ですが、売却益には約20%(所得税と住民税合わせて約20%)の税金がかかることも忘れてはいけません。
ざっくり5億円の売却益であれば手元の残金は約4億円になるということです。
これまで経営をされてきた方であれば当然ここまで考えは及ぶとは思いますが、念のために書き留めておきます。

私の場合は税引後の売却益とこれまでの貯蓄などの合算を元に、毎月の生活費や今後のライフイベントでの出費などをシュミレーションしてみて最悪仕事を今後一生しなくても食べていけるかを売却前に確認しました。これも事業売却の前に必要な作業だとは思います。まぁ、資金が足りないなと思えば働けばいいだけの話ですし、売却までに別口でお金が入ってくるルートを確保しておけば良いとも思います。私の場合は売却後も日本円で年収1000万円くらいは配当等で確保出来るようにしてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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