オーストラリア投資ビザ取得体験記

私は以前ワーキングホリデーとビジネスビザで滞在したオーストラリアが大好きで経営していた会社や自宅、当時所有していた高級車にキャンピングカーやら全てを売り払って2021年11月に移住をしました。188ビザの取得に関する体験記は日本語ではほぼ皆無に近いため、こちらに書き留めておこうと思います。

一昔前はオーストラリアは比較的簡単に永住ビザが取れる国でしたが、現在は非常に難しくなっています。数年前まではオーストラリアに会社を設立してそこに雇用されるというスキームでビジネスビザを取得し、数年滞在して実績を作って永住権を申請するという形が取れましたが、現在はこの形が取れなくなりました。

当初は上記の方法でビザが取れないかと模索をしていましたが、経営に夢中になっている間にビザの取得が出来なくなってしまったため、他の方法を模索し始めました。

そこで出てきたのが、サブクラス188ビジネスイノベーション&インベストメントビザ(4年の一時滞在ビザ)といういわゆる投資家ビザです。
このビザには大きく分けて2通りがありビジネスを起こして結果が出れば永住権に繋がるビザと州政府の債券に投資をし、4年間維持することで永住権に繋がるビザがあります。

これらのビザはいくつかのハードルがありますが、会社を長く経営していてある程度の実績がある人であれば比較的簡単に取れるビザではないかと思います。

4年後に永住権(サブクラス888投資永住ビザ)にほぼ確実に繋がる投資家ビザ(Investor Stream)のハードルとは以下の様な事項です。888永住ビザについてはまた別の機会に書こうと思います。

・1500000豪ドル(日本円で1億3000万円程)の州政府発行の債券に投資をすること。(州政府保証付きの債券で自分が購入したタイミングでは約1%の金利が付き、年2回の利払いがあります。4年後に元本は返還されます。永住ビザに切り替えるには購入後債券を4年間保持しなければいけません。日本の銀行では考えられない金利で、非常に安全な投資です。)
・ポイントテストで65点以上(オーストラリアの移民制度は大抵この方式を取りますが、188の場合は年齢、英語力、事業経歴や最終学歴等でポイントが加算されていき、その点に到達しないとビザの申請すら出来ないという形です。)

以下が2021年4月現在の内容です。現在のところ自分が2018年に申請して取得したビザの要件と全く同じで変更はないようです。

投資家ビザの評価項目

・年齢
・英語力
・学歴
・事業経歴
・資産状況
・事業の売上等
・その他

年齢は若ければ若いほど多くポイントが加算されます。原則55歳以下である必要があります。

年齢ポイント

18ー24歳 20ポイント
25ー32歳 30ポイント
33ー39歳 25ポイント
40ー44歳 20ポイント
45ー54歳 15ポイント
55歳以上 0ポイント



英語力の評価はIELTSが用いられます。自分の場合は申請前に受験しましたが、ジェネラルモジュールという移住に通常用いられる方を受験します。アカデミックモジュールという大学留学用のものもありますが、内容はジェネラルモジュールの方が簡単です。
自分の場合はIELTS6.0だったため、加算は5ポイントと少なかったですが、目安としては最低7.0あると良いと一般的には言われていますが、このInvestor Streamではそこまで英語力は必要ではありません。英語力がない場合はSecond Instalmentと呼ばれる移住後の州立専門学校の学費(1人につき4890豪ドル)を支払うことで回避が出来ます。ただ、最低限の英語力はないとこちらに来てから色々と苦労することにはなると思います。日常会話程度で十分です。

英語スコア

IELTSスコア 全てのセクションで5以上 5ポイント
IELTSスコア 全てのセクションで7以上 10ポイント



学歴は大卒だといくらかポイントが加算されますが、これもそこまで重要ではありません。

学歴ポイント

四年制大卒 10ポイント


資産状況の評価は以下の通りです。
個人の資産と会社の資産を合算することが出来ます。
ただ、ここで一見「わっこんなに持ってない」となるのですが、
会社を売却するつもりがあり売却益が約4億円近くあるのであれば可能性が開けて来ます。

というのも申請時点では現金で持っている必要はなく、会社の資産評価(売却した場合の金額)も資産として考慮してもらうことが出来ます。申請時直近2年間の会計年度で下記の金額に評価額がなりそうであれば大丈夫です。

自分の場合は5億円で売却出来たのですが、売却のデューデリジェンスの際に公認会計士が必ず入るため、その人に頼んで無料で評価資料を過去3年間分くらい作ってもらい、売却額が5億円だった訳だから売上や利益がこのくらいの前年はこのくらいの評価額、前々年の評価額はこのくらいと出してもらい、最終的に5億円で売れた訳だからこの数字は正当な評価額ですよねという形で過去2年間の資産はこれくらいはありましたと証明する形をとりました。

ここの部分は移民省のページにも詳細が書かれていないため、この数字だけを見てダメだと諦めている人たちが相当数いるのではないかと思われます。オーストラリアではビザの手続きの代行は資格を持った移民書士のみが出来ることになっています。日本のビザ代行業者は結局この移民書士に話を持っていき、マージンを抜いている構図になっているので現地の経験のある移民書士に直接頼むのが確実です。日本のビザ代行は制度をキチンと理解していないなというケースを複数回見ましたので手を出さない方が無難です。

資産ポイント

800000豪ドル以上 5ポイント
1300000豪ドル以上 15ポイント
1800000豪ドル以上 25ポイント
2250000豪ドル以上 35ポイント



大切なのが事業経歴です。売上規模(年商)は下記の通りです。思いの外ハードルは低い様に思います。

事業の年商ポイント

500000豪ドル以上 5ポイント
1000000豪ドル以上 15ポイント
1500000豪ドル以上 25ポイント
2000000豪ドル以上 35ポイント

自分の場合は売却直前の期の年商は3億円程でしたので、これだけで65ポイント中の35ポイントも貰えました。

あと、商標などを取得している場合は10ポイントが貰えます。

これらを加算していくと自分の場合は65ポイント必要なところ120ポイント近くがありましたので楽勝な感じでした。実際、このビザは移住する州を先に決めてこのポイントテストと一緒にEOI(関心表明)という書類を出すのですが、自分の移住先であるクイーンズランド州では朝書類を提出して当日の昼にはインビテーションが来たため移民書士の方も驚いていました。

あと、ビザの申請で分かりにくいのがこのビザの場合は特にですが州政府にまずはお伺いを立てる、州がOKと言えば評価自体は中央政府(移民省)が行うということです。現在はサウスオーストラリア州にある移民省の投資家ビザの部署があるようでそこで審査は行われています。州は投資が呼び込めるので優秀な人に対しては非常にウェルカムで中央政府は基本お金を生まない移民には来て欲しくないのでかなり厳格に審査するというイメージです。

審査期間ですが、ハッキリとした期間の定めがなく、ビザが降りるまで非常に苦痛な日々が続きます。自分の場合は申請から発給まで約2年間かかりました。また、申請費用ですが自分の場合家族3名で政府に支払う申請費用、移民書士に支払う報酬や証明書類の翻訳代(これが一番高い)、妻が英語が出来ないためSecond Instalmentと呼ばれる語学学校代全て合わせて日本円で400万円ほどでした。子供はいりません。これ万が一ビザが降りなくても一切返金されないものになるため、ほぼ確実にビザが降りるというある程度の自信と資金がある必要があります。

資金というとこれ以外に州政府に投資する1500000豪ドル、移住後2年以内に移動しなければいけない2250000豪ドル以外に上記の申請費用や引越し費用、こちらの私的医療保険など加味すると日本円で4億円くらいあると安心ではないかと思います。もし自宅を売却、法人名義の車を売却となると売却代金の他にプラスアルファで資産が増えるので安心ではないかと思います。

長々つらつらと書いてしまいましたが、もしご質問などがあればこちらからご遠慮なくお尋ねください。分かる範囲でお答えいたします。

まとめますと3750000豪ドルの資産(会社の資産評価や自宅や社屋などの資産も含む)があり、事業経歴が長くあり、直近2期の年商が2000000豪ドル以上あり、犯罪歴と健康上の問題がなければビザを取得出来る可能性はかなり高いということです。

また移住後も永住権に切り替わるまで制限はあるものの不動産や債券など日本では考えられないくらいの利回りでキャピタルゲインも狙える投資対象がゴロゴロしていますし、日本向けのビジネスなどもまだまだ考える余地があります。この部分も移住後の醍醐味ではないかと思います。

※移民法は頻繁に変更になります。上記は私が申請した2018年1月から2021年4月現在の情報です。もし取得をお考えの場合はオーストラリア政府のホームページを注視する様にしてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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