オーストラリアで外国人が自宅用不動産を購入する方法

追記 2022年7月時点FIRBへの申請費用が倍の20000ドルに値上げとなりました。

オーストラリアで外国人が居住用不動産の購入について法律に詳しい方々でもあまり実情を把握していないと感じたため、実際の経験を元にこちらに書き残しておきたいと思います。

私のビザは188投資家ビザ(仮永住権なるテンポラリービザ)ですが、ネット上には「外国人は不動産を購入できない。購入できるのはリゾート地にある外国人用の物件のみ」等と書かれている記事が散見されますが、事実とは異なります。

私は2021年8月に合法的に今の自宅を購入しましたのでその際の手続きを共有したいと思います。

まず、オーストラリア国籍や永住権を持たない外国人の場合は居住用に購入できる物件は以下の3通りが考えられます。

・住宅用更地
・新築物件
・中古物件(古家付き物件は含まない)

上記のうち1軒のみとなります。投資用の物件は購入が出来ません。(投資家ビザで投資用物件が購入できないのにはいささか不満がありますが)居住することが条件になり、値上がり待ち目的で空き家にしておくだけで高額な税金が課されます。
オーストラリア都市部では慢性的な住宅不足で、オーストラリア政府としては出来る限り居住用物件が増えることを期待して制度を定めています。

更地を購入して新築の建物を建てれば住宅が増えますので政府としては大歓迎です。ただ、オーストラリアの住宅業界はコロナ禍の建築ラッシュに加え、慢性的な人手不足に建材不足に悩まされており、いつまで経っても家が建たないという事例をよく見かけました。中には3年目に入るのにまだ完成していないという物件もあります。外国人がいきなりきて更地を購入して家を建てるというのは色々な意味でかなりハードルが高いのではないかと思います。日本で建てるようにスムーズにはいきません。裁判沙汰になるという話もよく聞きます。

次に新築物件と中古物件ですが、新築物件は極端に不足しています。しかし外国人が新築物件を購入するのには大きなメリットがあります。中古物件の場合、他人に賃貸することが出来ませんが、新築物件の場合、万一の場合は賃貸に出すことが可能です。また、何らかの事情で購入した物件に住めなくなってしまった場合、中古物件の場合は強制的に手放さなければいけませんが、新築物件の場合は賃貸に回して投資金を回収することが可能です。それらの理由で私は新築物件を購入しました。

ただ、日本のように新築だから間違いがないだろうという訳にはいきません。新築物件でも不具合が多く、引越しをしてから10箇所近くの不具合を直してもらう必要がありました。法定では6年間の保証を住宅メーカーはつけなければいけませんので「まともな」建築会社であれば言えば直してくれますが、先に申し上げた慢性的なリソース不足で直るのは2ヶ月後ということもざらにあります。

また、広い敷地に古家の建った物件を購入して建築するのはどうかと投資目線では考えてしまいますが、1軒の古家を取り壊して1軒の新築物件を建築することは認められません。なぜなら制度趣旨である住宅の増加が見込めないためです。ではリノベーションはどうかというと外国人の場合はかなり制約が多く、古家を購入してリノベーションが終わるまで他の場所に住むということが出来ません。原則住みながら部分的にリノベーションすることしか認められません。また、地域によって古い景観を残すために建て替えが出来ない地域があります。主に戦前に建てられた建物は建て替えが出来きず、リノベーションをするにしても建物の形状についても結構厳しい条件が課されます。

上記の様に様々な規制がありますが、これらはFIRB(Foreign Investment Review Board:海外投資監視委員会)によって管理されています。購入にあたり、どのような物件をいくらで、いつまでに購入するのかを事前にお伺いを立てExemption certificateと呼ばれる除外承認を貰わなければいけません。この申請には何と10000ドル以上の申請料がかかります。有効期限は1年間となり、慢性的な住宅不足の中で必死で物件を探し期限内に購入しなければいけません。

私も途中何度も挫折しそうになりましたが、縁がある時は向こうから歩み寄ってくるものです。
私の場合はたまたま息子が行きたいハイスクールの学区内をたまたま歩いていた時に新築物件らしい物件の看板を見つけ、すぐに電話で不動産業者に連絡をしましたが、既に売却済みということで肩を落としていましたが、もし何かで契約が成立しなかった場合は連絡が欲しい旨を伝えていました。その数週間後に「契約者の資金調達の目処が立たなくなったため契約解除になったが、まだ興味があるか」と連絡があったため、買う気満々だから内覧させて欲しいと伝えたところ、当日中に内覧をして、翌日には以前の売却金額に20000ドルほどプラスしてオファーをしました。不動産業者も足元を見てくるので、あと10000ドルプラスしてくれたら他に広告はせずに私に譲ることを約束すると電話で言うので、いいよと返事をしました。このようにオーストラリアの都市部の不動産はかなりの売り手市場で、数日間にわたる内覧が開始されると多いところでは100人くらいの内覧者が訪れ、物件の取り合いとなります。

そのため、オーストラリアの不動産売買では公開オークション形式、もしくはオファー形式が取られます。オークションも一度参加しましたが、10名ほどの入札者で嘘の様に価格が上がって行きます。1700000ドル(日本円で1.5億円弱)ほどの予算で臨みましたが、結局物件の落札価格は2100000ドル(日本円で1.8億円)ほどになりました。この経験からオークション形式だと何としてでも手に入れたいとその場で熱くなってしまい思わぬ高値掴みが起こりうるなと思い、オークション物件は避ける様になりました。

気になる諸経費ですが、下記の様なものがあります。

・先に説明のFIRBのExemption Certificate申請費用約$10000
・不動産取得税 物件価格の3%
・外国人不動産取得税 物件価格の7%(外国人の場合、この負担がかなり大きい)
・弁護士費用 $1800程度
・固定資産税清算金(前所有者支払い分との調整)
・水道代等清算金(前所有者支払い分との調整)
・その他弁護士経由で支払う印紙税等の細かな手続き費用 $1500弱

日本人的には物件購入に弁護士費用?という感じですが、オーストラリアでは売主と買主にそれぞれ弁護士が付き、登記や金銭の受け渡しを双方の弁護士を通して行います。日本でいう司法書士の様な存在です。ただ、中にはとんでもない弁護士もいるそうで(日本人だからといって信用は出来ません。)自分の場合は日本人に最初は依頼しようと思っていましたが、その日本人弁護士の対応があまりにも悪く結局オーストラリア人の弁護士に依頼しましたが、むしろ料金も半額以下で迅速に対応してくれました。もしご希望の場合は無料でご紹介しますのでご一報ください。

諸経費として一番大きい部分は不動産取得税ではないかと思います。1700000ドルの物件を購入した場合の弁護士費用などを含む総額は1900000ドル程度になりました。不動産取得税は購入時に1度だけ支払うものですので、私が住むブリスベンでは2021年の不動産価格は約30%ほど上昇し、2022年度も最低20%は上昇する見込みと大手銀行のレポートを先日ニュースで観ましたが7%払ってでも買えるうちに買っておくというのが得策だと判断しました。2032年にはブリスベンオリンピックが決定し、今回のコロナ騒動でシドニーやメルボルンなどの大都市からのブリスベンへの移動が止まらない状況や移民がこれからさらに増えていくことを考えると住宅用不動産価格が下がる要因が見当たりません。皆バブルだと言いますが、私はそう思いません。この住宅用不動産の価格上昇はシドニーやメルボルンでこれまで起こっていることが第三の都市ブリスベンでも同様に起こると判断しています。

次に固定資産税(Ratesと呼ばれます)についてですが、地域によってことなりますが、私の住んでいるシティから車で10分くらいの地域で$460/4半期くらいになります。

最後に資産価値を守るという意味で重要なことをいくつかお伝えしたいと思います。

私の住むブリスベンもそうですが水害に弱い地域がオーストラリアには多いです。日本の様に山があまりなく大雨が降ると低地を直撃します。日本ではあまりニュースになりませんが、つい先月もニューサウスウェルズ州とクイーンズランド州で大規模な洪水がありました。ただ、浸水しない地域を自治体が出しているFlood Mapで事前に調べることが重要です。

また、オーストラリアでは評判の良い学校の校区内の物件に人気が集中します。ブリスベン地域であれば、Brisbane State High School、Mansfield State High School、Indooroopilly State High School、Kelvin grove State Collage、Cavendish Road State High Schoolなどの公立高校のレベルが高く物件価格が高くなりがちです。クイーンズランド州では学校が1月始業のため、新しい期が始まると家を購入予定の人は一斉に物件を探し始めます。

購入時に希望の全て叶えるということはなかなか難しいと思います。かなり極端な売り手市場のオーストラリアの住宅相場では日本の様に新築戸建て◯千万円の様な単純には行かず、売る側もハッキリと価格を提示してこないのが通常で、出来る限り高く売ろうとしてきます。需給関係が真逆の日本から来ると最初は面食らいます。「それだけしか出せないなら購入は無理」とハッキリと不動産業者も伝えてきます。正に買主間の競争です。また、日本では法律的に売主と買主の相互の利益を追求する様になっていますが、オーストラリアの不動産業者は日本の不動産業者と違い、売主側のことしか基本的に考えていません。

家族構成や資産状況、年齢などで優先すべきことは変わってくると思いますが、あまり物件にすぐ飛びつかずに優先事項を書き出してみて、「これくらいのスペックのものをこれくらいの価格で、この場所に欲しい」という目標を一旦設定し、その後に色々と物件の内覧やオークションの見学などに参加してみて、相場観を掴みながら目標を修正していくという形が上手くいくのではないかと思います。

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最後までお読み頂きありがとうございます。

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